rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第19章 Villain or Ghost?
「おい」
「……っ…、分かって…浴、び…」
一度の行為で立て続けに抱くか否かは、その時々で不規則だった。
要はシルバーの気分次第である。
腰を振っている最中、この後すぐに二度目も始めてやろうと思う夜もあれば、名無しが着替えを終え、帰ろうとしているところを再びベッドへ…というときもあった。
どのケースにもはまらずにいた今、シルバーが飲み物を口にしながら訝し気に彼女に声をかけていたのは、抱いたばかりの表情に色香のひとつも舞っていなかったからだった。
「……」
ペットボトルの飲み口に歯を立て、数回カンカンと白いそれを鳴らす。
苛立ちを見せるかの如く眉間に皺を寄せもしたけれど、意外にもシルバーは、そこで怒りにとらわれ過ぎず、を心がけた。
名無しのそわそわとした面持ち、怯えさえ匂わせるその佇まいはあまりにも異様であり、彼自身、そんな名無しを見たのが初めてでもあったのだ。
もっとも、自分と初めて対面した、あの車の中でのことは例外だったけれど――。
「おかしな奴だな…マジで砕けちまったか?オレはいつものようにおまえをやっただけだぜ…?まあ激しくはあったか……ハッ」
「……」
「……、まさか連れてって欲しいなんて言うんじゃねえだろうな?別にいいけどよ……ほらよ」
「ひ!!」
何を恐れ、戸惑い、唇を震わせてろくに会話も出来ないでいたのか…。
シルバーはただ、その原因が気になって仕方なかった。
そして痺れを切らして、試しに一度、彼女を抱き上げ洗面所へ向かおうとする。
比較的つり目である彼のそれが丸く開いたのは、同じ機のことだった。