rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第1章 rain of teardrop
視界を遮られていても、独特のそれが鼻を終始掠めている。
咽返るほど革の匂いがしたのは、恐らく其処が車の中だったから。
「む・・・、ンン・・」
「ハァ・・・おいおい・・舌くらい絡ませろよ・・んー」
「!・・・っぐ・・、ぁん・・は・・・」
「あー・・・なあ・・名前。何てェんだ?」
「ッ・・・」
腕を取られ、連れ込まれるまでもあっという間だった気がする。
抵抗する余裕などある筈もなかった。
声を上げた瞬間には、唇と、その咥内にとても気持ちの悪い感触が走って、息の詰まる症状が虫唾と共に押し寄せた。
止まらない吐き気に苛まれる――。
「ほーう・・・名無しってのか」
「っ・・・?!や・・」
目元が締め付けられていたのは、長い布でも巻かれていたのが原因だろう。
玉になった結び目が後頭部にあたり、それが更に組み伏せられていた床に触れ、名無しは痛みに顔を顰めた。
そのうえ押し倒されたと思った矢先には、太い声の主に無理やりキスをされ、口の中には舌が蠢いていたのだ。
否定的な声を出したくなるのも無理はなかった。
もっとも、その悲鳴を出す前に口を塞がれていたゆえに、結局何の抵抗も出来ずにいたのだが。
耳元で名を聞かれ、そして勝手に、持ち物からそれを特定される。
背筋は自然と凍り付いた。