第8章 嵐の文化祭 その1
「へ?!や・・・あの・・・」
「さてと・・・準備もあるし戻るか」
「・・・ま、待って!」
「・・・なんだよ。まだ俺に何か用か?」
いつも優しいのに、こういう時の宗介さんは本当に意地悪だ。私がちゃんと言わなければ、きっと何もしてくれない。
「あの・・・え、えっと、・・・・・・えい!!」
宗介さんは行ってしまおうとするし、そんな宗介さんは相変わらずかっこよくて見れないしで、どうにもならなくって、私は思い切って宗介さんにぎゅっと抱きついた。宗介さんの広い胸に顔を埋める。
「・・・そ、宗介さんもぎゅってしてくれると、嬉しい・・・です・・・」
「はっ!・・・んっとにお前はしょうがねえなあ・・・・・・」
なんて言いながら、宗介さんはすぐに私のお願いを聞いてくれた。宗介さんの大きな手が優しく頭を撫でてくれて、もうドキドキが止まらない。それなのに宗介さんの鼓動はいつもと変わらないなんて悔しい。
「・・・・・・だ、大好きです・・・宗介さん・・・」
「・・・・・・ほんっとお前・・・そういうの唐突だよな・・・」
「・・・だ、だって・・・」
そうは言っても本当にそうなんだから仕方ない。少しだけ、宗介さんの鼓動も速くなった気がする。
「・・・ヒカリ。ぎゅーだけでいいのか?」
「・・・・・・」
・・・全部全部わかってるくせに。宗介さんに抱きついたまま、私は首を横に振る。
「はっ・・・ほんっとにわがままなお嬢様だな・・・・・・顔上げろ、ヒカリ」
「・・・・・・」
真っ赤になってる顔を見られたくない。でも・・・それ以上に宗介さんにキスしてほしい。思い切って顔を上げると、宗介さんと目が合って少し笑われてしまった。恥ずかしくって、すぐに目を閉じる。
じっと宗介さんの唇が降りてくるのを待つ。この瞬間は身長差がもどかしくて仕方ない。恥ずかしいのに、早くしてほしいのになかなか唇が触れてくれなくて。わずかな時間なのに、すごく長く感じる。
「んっ・・・・・・」
やっと宗介さんの唇が触れる。そうすると、もう宗介さんのことしか考えられなくなってしまう。さっきまで飛び出そうなぐらい激しかった鼓動が、ほんの少しだけ落ち着いて、ずっとずっとキスしていてほしいと思ってしまう。