第7章 『会いたい』
その後、ベンチに座ったまま私達は話をした。その内容はやっぱり来週の鮫柄の文化祭の話がほとんどだった。
「宗介さんのメイドさん、すっごい楽しみです!」
「・・・いや、お前何気持ち悪い勘違いしてんだ。メイドは1、2年だ」
「えぇ?!そうなんですか?せっかくお父さんにカメラ借りようと思ってたのに・・・」
「・・・なに変なやる気出してんだ。3年は執事だって言ったろ」
断片的にしか話を聞いてなかったせいで、どうやら私は大きな勘違いをしていたみたいだ。宗介さんのメイド姿なんて、この先ずっと見られないだろうから、見たかったのに・・・
「執事、ですか・・・執事・・・執事・・・」
頭の中でテレビとか漫画とかで見た執事の姿を思い浮かべる。その衣装を身につけている宗介さん・・・・・・
「どうした?」
「いえ!あの!と、とっても楽しみにしてます!」
・・・なんだかものすごくかっこいい予感がするのは、私の気のせいだろうか。想像しただけで顔が少し熱くなってきてしまった。
「・・・そろそろ帰るか。お前んちの親ももう帰ってくるだろ」
「あ、はい・・・そうですね・・・」
携帯で時間を確認しながら宗介さんが言う。確かにもう結構遅い時間だ。
「・・・また来週会えるだろ」
「そう、ですけど・・・でも・・・」
来週になれば文化祭で会えるのはわかってる。今日だって、宗介さんは忙しいのにわざわざ会いに来てくれた。でも・・・・・・
「・・・まだ・・・宗介さんと離れたくないです・・・」
そう言ってすぐ近くにある宗介さんの腕にぎゅっとしがみついた。まだ宗介さんと一緒にいたい。
「・・・・・・おい」
「・・・あーあ・・・帰りたくないな・・・・・・」
そう言って、さらに強く宗介さんの腕に抱きついた。
「・・・わかった。お前の気持ちはわかったから・・・とりあえず離せ、ヒカリ・・・」
「・・・なんでですか?」
「・・・お前にはわかんねえよ・・・頼むから、離してくれ・・・」
腕に抱きついている間、宗介さんは全然私の方を見てくれなかった。そんな風にお願いされたら、もう言うことを聞くしかなくて、名残惜しいけど、私は宗介さんから身体を離した。