第7章 『会いたい』
「ち、違う!違います・・・嬉しいです、すっごく・・・・・・あ、会いたかったです、宗介さん・・・」
素直に自分の気持ちを伝えて、宗介さんにぎゅっと抱きついた。
「・・・おう・・・俺も・・・・・・ヒカリに会いたかった」
私にしか聞こえないぐらいの小さな声でそう言うと、宗介さんもすぐに私を抱きしめてくれた。たった10日ぐらいしか離れてなかったのに、宗介さんの鼓動とかあたたかさとかがすごく懐かしい。ずっとずっとこうしていたいと思ってしまう。
宗介さんの大きな手が髪を優しく撫でてくれて、小さな声で私の名前を呼ぶ。それを合図に私は顔を上げて目を閉じる。だけど・・・
「・・・・・・あー・・・人、まだ多いな。場所変えるか」
電車が止まって数人の人が改札から出てくる。さすがにここで・・・は、私も恥ずかしい。
「そ、そうですね・・・えっと、いつもの公園行きましょうか」
「そうだな」
いつもの公園、というのはタコの滑り台がある公園のことだ。宗介さんが私を送ってくれた時、まだ離れがたい時なんかは、私達はその公園で少しの間話をしたりする。
宗介さんが差し出してくれた手を握って、私達はその公園を目指した。
まだ早い時間は小学生が遊んでたりするけど、遅い時間になると、公園には誰もいなくなる。だから二人きりでいたい時には、すごくいい場所だ。いつもただベンチに座って何気ないことを話してるだけなのに、その時間がとても楽しい。
「あはは!このタコの滑り台見る度に思い出しちゃいます、宗介さんが「おい!もうその話はやめろ」
ベンチに並んで座ると、自然とタコの滑り台が目に入る。
いつもこの滑り台を見ると、宗介さんの方向音痴っぷりを思い出して笑ってしまう。私がその話をしようとすると、宗介さんに遮られてしまった。
「だって、本当におかしかったんですもん・・・ん・・・」
「・・・あー・・・とりあえず、さっきの続き、させろ・・・」
「はい・・・・・・」
宗介さんの手が私の頬に触れる。少し照れくさそうに言うと、宗介さんの顔が近付いてきて、私は目を閉じた。