第4章 ジンベエザメの試練 ふたたび
「あの・・・宗介さん」
30分ぐらい経ったころだろうか。ヒカリが俺に話しかけてきた。
「ん?」
目は画面にやったままヒカリに答える。
「えっと・・・5月に凛さん達と映画、行きましたよね?」
「・・・おー、そうだったな」
あの時は俺とヒカリ、あと凛と江がいたんだったな。あれからまだ4ヶ月ぐらいしか経ってないのに、ずいぶん長い時間が経ったような気がする。
「あの時・・・私達、えっと・・・こういう格好で観てたじゃないですか」
そう言ってヒカリが、両腕を前に回すようなジェスチャーをする。
・・・そうだったな、やたら狭い席に二人で座ることになって、俺の脚の間にヒカリを座らせたんだった。
「えーっと・・・あの時、宗介さん、私のことどう思ってたのかなって、ちょっと気になって・・・」
隣りのヒカリに目をやると、その頬が少しだけ染まっていた。
「別に・・・あの時は特になんとも思ってなかった。お前、狭い狭いうるせえし、それなら・・・って思ってやっただけだ」
あの時の正直な気持ちを答える。ヒカリのことは面白い奴だとは思ってたけど、特別な感情はまだなかった。
「そ、そうですか・・・まあそうですよね」
ヒカリが落ち込んだような顔をする。昔のことだし、どうしようもないだろ、と思う。だけど、俺も少し気になったので、あの時のことをヒカリに聞いてみることにした。
「・・・ヒカリは?」
「へ?」
「ヒカリはあの時、俺のことどう思ってたんだ?」
少しずつ自分で自分を追い込んでいってるような予感がしてる。だけど、気になっちまったんだから仕方がない。
「わ、私は・・・まだ、その・・・自分の気持ちに気付く前で・・・でも、宗介さんがすごく近くって・・・ずっとずっと・・・ドキドキしてました・・・」
「・・・・・・そうか」
想像以上にやばかった。真っ赤な頬をして、少し潤んだ瞳でヒカリが俺を見上げてくる。
『気付く前』、ってことは、こいつあの時もう俺のこと好きだったってことかよ・・・・・・
そう思っただけで、少し鼓動が速くなるのを感じた。