第2章 ジンベエザメの試練
「・・・・・・お前、あれだろ。『どこがわかんないのかもわかんない』ってタイプだろ?」
パラパラと問題集を見た結果、そう結論付けた。2割できたとは言っていたが、それもかなり適当で、偶然解けたような感じだった。
「せ、正解です!宗介さん、すごい!」
パチパチとヒカリが拍手してくれたが、全く嬉しくない上に、そんなことしてる場合じゃない。
「はぁ・・・基本的なところから全部、教えてかなきゃダメだな・・・気合い入れて聞けよ、ヒカリ。じゃないと終わらねえからな」
「・・・は、はい」
少し脅すように言うと、ヒカリの表情が先程までとは違い、一気に引き締まった。
「・・・・・・なんだ、お前。教えてやれば結構すぐにできるじゃねえか」
1時間ほど集中してやった結果、基本から丁寧に説明してやれば、ヒカリはすぐに理解できる、ということがわかった。
「そ、そうですか?!きっと宗介さんの教え方が上手なんですよ!・・・うちの数学の先生、早口で何言ってるのかわからないんですよね。それで・・・」
「それで、呪文みたいに聞こえて、気付いたら寝ちまってる・・・ってパターンだろ、お前」
「す、すごい!大当たりです。宗介さん、どこかから見てました?」
・・・まったく何、目輝かせてアホなこと言ってんだ。そんなの見てなくても大体予想ぐらいつく。
「はぁ・・・バカ言ってんな・・・まあ、これからもわかんなかったら俺のとこ来い。留年したくねえだろ?」
「は、はい!・・・ふふふ、私、宗介さんが先生だったら、テストで100点とれちゃうかもしれません」
そう言って、俺に向かってにっこりと笑うヒカリ。正直、俺はヒカリのこの笑顔に弱い。
少しだけ早くなり始めた鼓動を悟られないように、ヒカリから視線を反らし、再び問題集に視線を落とす。
「・・・あー・・・まあ、とにかく続きやるぞ。まだ半分も行ってねえし、さくさくやんねえと終わんねえぞ」
「そ、そうですね!頑張ります!」
ヒカリもまた、問題集に向き直った。