第2章 ジンベエザメの試練
「俺にピント合わせたら、お前、頭の先っちょぐらいしか入らなそうだし、お前に合わせたら俺、顎ぐらいしか入らなそうだしな」
実際、いくら身長差があったところでそんなことあるわけないが、こう言えば、だいたいヒカリがどんな反応をするかぐらいはわかった。
「そ!そんなこ「あーわかったわかった。今度撮ってやるから・・・な?それでいいだろ?」
そして、俺の予想通りに顔を真っ赤にして怒ろうとするヒカリの言葉を遮って、軽く頭を撫でてやると、ヒカリは渋々だが納得したようだった。
普段通りの会話をしたおかげで、さっきまでの浮ついた気分がなんとか落ち着いてきた。これなら雑念にとらわれずにヒカリの課題をちゃんとみてやれそうだった。
部屋の中央にある小さなテーブルに向かい合わせで座る。
「ふふ、宗介さんが来てくれるから、コーラ買っておいたんですよ」
そう嬉しそうに言いながらヒカリがグラスにコーラを注いでくれていた。
「あれ・・・俺、コーラ好きってお前に言ったか?」
「いえ、言われてないですけど。ちょっと前にファミレス行った時に、宗介さんコーラ飲んでたし、あと・・・地方大会の前の日にもコーラ、買おうとしてましたよね?」
ああ・・・と納得がいった。確か地方大会の前日は買おうとしたけど売り切れでヒカリに譲ってもらったんだったな・・・よく見てるよな、こいつ。
「はっ・・・お前ってほんと・・・」
「・・・ほんと?」
小首を傾げて聞いてくるヒカリ。
・・・やばい。なんてこと言おうとしたんだ、俺は。『お前ってほんと俺のこと好きだよな』なんて言ったら、妙な雰囲気になるに決まってる。自分で自分を追いつめるところだった。
「・・・いや、なんでもねえ。コーラ、ありがとな・・・そんじゃ、時間ねえし、とっとと始めるか」
「はい、よろしくお願いします!」