第2章 ジンベエザメの試練
「お待たせしました・・・って、わああ!は、恥ずかしい写真見ないでくださいよ!」
いつの間にかヒカリが部屋に入ってきていた。カチャカチャと音をさせながらトレーを部屋中央のテーブルに置くと、慌てて俺の方へ駆け寄ってきた。
「別に恥ずかしくねえだろ。いい写真じゃねえか。お前、親父さんとお袋さんによく似てるな」
そう言って写真立てを渡してやると、ヒカリは真っ赤な顔をしてそれを受け取った。
「あ、う・・・よ、よく言われます・・・そ、そうじゃなくって!この写真の私、すごく子供っぽくないですか?」
「は?今とたいして変わらねえだろ」
もう一度ヒカリが写真を見せてくれるが、ほとんど違いがわからない。そして、ヒカリが怒るからはっきりと声には出さないが、今も相当ガキっぽい。
「か、変わったんですよ!私だってこの数ヶ月で色々!」
「あーはいはい」
そう言ってヒカリの頭をポンポンと軽く叩く。この後返ってくる反応なんてもうわかりきってるが、それでもやめられない。
「もう!そういうのが子供扱いなんですってば!!」
「ははっ、わるいわるい」
予想通りのヒカリの反応に思わず笑ってしまう。
「・・・あ、そういえば・・・宗介さんとふたりきりの写真って持ってないので、こ、今度、一緒に撮ってもらってもよろしいでしょうか・・・?」
「あ?・・・あー・・・まあいいけど、あんま得意じゃねえんだよな、写真」
得意じゃないのも事実だったし、なんとなく気恥ずかしさからそう答える。
「いいんです!眠そうな顔してても、無表情でも、仏頂面でも!私が、宗介さんと一緒に写りたいんです!」
・・・こいつは俺をフォローしようとしてるのか、貶そうとしてるのか、どっちなんだ?
「・・・まあでも俺とお前じゃ、どっちかが写真に入らなくなっちまうだろ」
「へ?」
ヒカリの言い分に少し腹が立ったので、その腹立ちついでに、もう一度ヒカリをからかってやることにした。