第26章 ふたりの、初めて。 その3
「いや、ぎゃあって・・・お前、そういうつもりで誘ったんだろ?」
「そ、それはそうですけど!とと、とりあえず、し、しまってください!」
「はぁ?!・・・んだよ・・・」
ぶつぶつ言いながらも宗介さんはそれをまたポケットに閉まってくれた。よかった・・・そういうつもりで誘ったのは確かだけれど、実際それが目の前にあると落ち着かなくて、どうにかなってしまいそうだった。
「え、えっと・・・な、なんで・・・そんなの持ってるんですか?」
「なんでって・・・お前、この前の合同練習の時ぐらいからなんか様子おかしかったし・・・もしかしたら、と思ってな」
・・・うわああ・・・あの時、イヴの予定を聞いた時から、宗介さんには私の思考全部読まれてた、ってことだよね・・・なんでこうも私は全部が顔に出てしまうんだろう。恥ずかしすぎる・・・
「・・・それに・・・」
「へ?」
一人こっそりと照れている私の耳に、宗介さんの小さな声が入ってきた。
「・・・・・・ヒカリに会う時は・・・だいたいいつも持ってた」
「・・・え、えっと・・・そ、それじゃあ、あの時も?」
「あの時?」
「えっと、夏休みにここで数学教えてもらった時、です」
「・・・ああ、一応な」
宗介さんは少し照れくさそうにしながらも私の方を見て答えてくれた。
・・・天方先生の言ってたこと、本当だったんだ。私が全く意識してないような時でも、宗介さん、そういうこと考えてたんだ・・・男の子って、本当にそうなんだ・・・
・・・いや、でもあれはさすがに私が子供っぽすぎたのかな。誰もいない家に何も考えずに彼氏を誘うなんて・・・
「あの・・・」
「ん?」
こんなこと聞いたら怒らせちゃうかな・・・だけど、どうしても聞いてみたい。
それに、今の雰囲気だったらなんだか聞いても良さそうな気がして、思い切って宗介さんに聞いてみることにした。