第26章 ふたりの、初めて。 その3
「ひゃっ!・・・ちょ、ちょっと!や、やめてくださいって!」
「っ・・・お前が鈍すぎるのが悪い・・・なんでわかんねえんだよ・・・!」
最後に強く私の頭をぐしゃぐしゃっとすると、宗介さんはやっと手を離してくれた。せっかく気合を入れた髪型が、宗介さんのせいで台無しだ。
「・・・も、もうひどいですよ!・・・宗介さんのいじわる・・・」
「・・・うるせー」
乱れた髪を直しながら宗介さんを少し睨む。宗介さんはふてくされた感じで、そっぽを向いてしまった。そして、まだその頬は赤い。そんな宗介さんを見ながら、さっきの言葉を思い出す。
・・・宗介さんも緊張、してくれてたんだ。私とおんなじだったんだ。宗介さんとおんなじ気持ちだったことが嬉しい。宗介さんがドキドキしてくれてたことが嬉しい。それに・・・『本気で惚れてる奴』、って私のこと言ってくれた。それだけで私の頬も宗介さんの頬と同じように赤く染まっていく。このまま宗介さんに抱き着いてしまいたいぐらい嬉しい。宗介さんのことが好き。
だけど・・・
「っ・・・ごめんなさい、宗介さん・・・」
私が風邪なんてひいたりして、ちゃんと準備できなかったから今日はできない。宗介さんの気持ちがわかってせっかくいい雰囲気になったのに・・・ちゃんと謝らないといけない。
「・・・は?」
急に謝り出した私に驚いたのか、宗介さんはそらしていた顔をこちらに向けてくれた。
「せっかくうち、来てもらったのに今日は、その・・・できません・・・えっと・・・買うの忘れちゃって・・・」
「買うって何をだ?」
「え?いえ、だからその・・・えっと、あ、赤ちゃんができないようにするための・・・その・・・」
直接名前を言うのが恥ずかしくて、曖昧に言葉を濁したら、なんだか余計に生々しくなってしまった。顔が一気にかあっと熱くなり、今度は私が視線をそらしてしまう。
「・・・ああ・・・それなら持ってる・・・」
「へ?」
「・・・ほら」
宗介さんはズボンのポケットをごそごそと探っている。やがて取り出された手の上には小さな正方形をしたものが載せられていた。
「っへ・・・ぎゃああ!!!!」
見慣れないそれに、思わず悲鳴をあげてしまう。しかも一個だけじゃなくって、それはいくつか繋がっていて。