第26章 ふたりの、初めて。 その3
「・・・・・・ため息?」
「そ、そうです!電車に乗った時ぐらいから、宗介さんため息ばっかりついてます!」
「・・・・・・マジか・・・」
そう言うと、なぜか宗介さんは俯き、黙りこくってしまった。一体、どうしたんだろう?
「・・・あ、あの・・・宗介さん?」
あまりに宗介さんが静かになってしまったので、少ししてから恐る恐る声をかけてみる。
「いや・・・あれだ・・・俺も無意識でついちまってた・・・」
「へ?」
「・・・それで不安にさせたんなら、悪かった」
宗介さんは謝ってくれたけれど、いまだに下を向いたままだから表情がわからない。
「えっと・・・無意識で、ですか?」
「・・・ああ」
「え・・・なんで、ですか?」
ますますわからない。なんで無意識にため息なんてついていたんだろう。
「・・・・・・お前、ほんっと鈍い」
「ちょ、ちょっと!なんですか、いきなり!わかりませんよ、普通!」
やっと宗介さんが顔を上げてくれた。だけど、その宗介さんはまたまた失礼なことを言ってくる。
「・・・・・・んなの・・・緊張、してるからに決まってるだろ・・・」
「緊張?・・・え?緊張って、あのドキドキする緊張ですか?」
「・・・他に緊張があんのかよ」
宗介さんの言っている言葉の意味がわからなくって思わず間の抜けた質問をしてしまった。そして、宗介さんの頬が少しずつ赤くなってきているのは私の気のせいだろうか。
「え・・・で、でも・・・あの、宗介さん・・・えっと、初めてじゃないですよね・・・?」
私の中ではもう思い出したくないことだけど、文化祭の時宗介さんが話してくれたことを思い返してみる。宗介さんは前の彼女と何回もしたって・・・それなのに、なんで緊張なんてするんだろう?
「・・・・・・・・・・・・本気で」
「へ?」
「・・・本気で惚れてる奴とすんのが、初めてだからに決まってんだろ・・・」
そう言いながら、宗介さんの頬が今まで見たことがないぐらいに赤くなっていく。だけど、それを隠すように宗介さんは私の頭をいきなり乱暴にかき混ぜてきた。