第26章 ふたりの、初めて。 その3
「あっ!暖房入れないと寒いですよね!気付かなくってすいませんでした!」
「いや・・・」
また慌ただしく部屋の中を歩いてエアコンをつける。宗介さんは全然動いてないのに、私だけバタバタしててなんだかバカみたい。でも、こうしてないと落ち着かないし、どうしていいかわかならくなってしまう。
「・・・あ!ごめんなさい!コーヒーでしたよね・・・はい、どうぞ」
「ああ・・・ありがとな」
今度は置きっぱなしにしてしまっていたトレーのところに行って、宗介さんにコーヒーを差し出す。すぐ隣だと余計緊張してしまいそうだから、宗介さんから少し離れたところに私も座る。
「私はココアにしました!宗介さん、そんな苦いの飲めるなんてすごいですよね。あはは!」
「あ?あー・・・そうだな」
「あ、あのっ!おかわりありますので、遠慮無く言ってくださいね!」
「おお・・・わかった」
「・・・・・・」
ずっとほとんど一人でペラペラしゃべってしまったけれど、お互いに飲み物を手にすると、いよいよ話すことがなくなってしまう。
静かな部屋に、飲み物を啜る音とエアコンの音だけが響く。
「お、お味はいかかですか?」
「ん?・・・ああ・・・美味いな」
「か、身体、あったまってきました?」
「・・・ああ、そうだな」
「・・・・・・」
・・・どうしよう。どうしたらいいの?
エアコンだって十分に効いてる。あったかいもの飲んで、身体もあったまった。それなのに、宗介さんずっとずっと素っ気ないままだ。私の方だって全然見てくれない。なんだかよくわからない空間を見つめたまま、じっとなにか考えこんでるみたいだ。
・・・・・・やっぱり私がうちに誘ったのがイヤだったの?せっかくこれからデートだって時に、あんなショッピングモールの真ん中で誘うなんて、何考えてんだって思われたのかな。
でも・・・でも、私、頭がもうそのことでいっぱいだったんだもん。昼ごはんの時だって、ずっとずっと考えちゃって、ご飯あんまり食べられなくなっちゃって。とにかく早く言わなきゃって、その気持ちしかなかったんだもん。