第26章 ふたりの、初めて。 その3
「わ!ああ!あ・・・え、えっと!私の部屋、先行ってて下さい!私、なんかあったかい飲み物用意してから行きます!」
慌てて思わず言っちゃった!私の部屋って!どうしよう、でももう今更取り消すことなんてできない。
「おう・・・悪いな」
「い、いえ!宗介さん、何がいいですか?コーヒーとか、ココアとか・・・あ、普通のお茶もありますよ」
「・・・じゃあ、コーヒー頼む」
「は、はい!宗介さん、ブラックでいいんですよね、確か」
「おう・・・そんじゃ、先行かせてもらうな」
階段を上っていく宗介さんの背中を見送る。
・・・どうしよう、いきなり部屋なんて、はしたないって思われたかな・・・・・・
・・・・・・ううん!今は余計なこと考えないで、飲み物の準備しよう。外、寒かったし、宗介さんにあったまってほしいし。
キッチンに行って、手早く飲み物を用意する。宗介さんにはコーヒー、自分にはココアを作る。
トレーに飲み物を並べて、『よし!』とまた気合いを入れる。あったかいものを飲んであったまれば、宗介さんもいつも通りに戻ってくれるかもしれない。
・・・きっとそう。宗介さん、9月生まれだから、寒いの苦手なんだ・・・うん。
無理にでもそう思い込んでないと、心が折れてしまいそうだった。トレーを持つ手が少し震えてしまう。慎重にゆっくりと階段を上って、自分の部屋の扉の前に立つ。ひとつ大きく深呼吸。この向こうに宗介さんがいるのに、大好きな宗介さんなのに、開けたくない、逃げ出しちゃいたいような気分。
・・・でもダメだ。誘ったの私だし、宗介さんを待たせちゃけない。もう一度心の中で『えい!』と気合いを入れて、私はドアを開けた。
「お、お待たせしました!遅くなっちゃってすいません」
「ああ・・・いや、別に」
宗介さんは部屋の真ん中置いてあるテーブルの横に座っていた。宗介さんの着ていたコートが無造作に床に置かれているのを見て、私は慌ててトレーをテーブルの上に置いた。
「あ、す、すいません!コート、皺になっちゃいますよね。ハンガー掛けておきますね!」
「あ・・・ああ、悪いな」
「いえいえ!・・・あっ!私なんてコート着たままでした!あはは!」
宗介さんのコートと、自分のコートをハンガーにかけておく。自分の声が上擦っているのがわかる。