第25章 ふたりの、初めて。 その2
「おい・・・んな怒んなって」
「怒りますよ!宗介さんが遅いせいで・・・これっ・・・!!」
だけど、こいつが機嫌を損ねたままだと困る。宥めるように言ってやると、ヒカリは真っ赤な顔をしながら、強く握りしめた手を俺の方に突き出してきた。
「・・・・・・お前、どうしたんだ?これ」
「そこのサンタクロースがくれました!しょ、小学生の子までだよ、って言って!!」
今まで気付かなかったが、ヒカリの手から伸びる細い糸を辿ると、ヒカリの頭の上で風船がふわふわと揺れていた。それには、サンタクロースとトナカイのイラストが描かれていた。
そして、俺達から少し離れた場所に目をやると、サンタの格好をした店員が風船を配っていて、小さな子供がたくさん群がっていた。
「・・・」
「私っ!いらないって、高校生です!って言ったのに・・・あの人、押し付けてきて!それもこれも宗介さんが「ふはっ!・・・っはははは!」
・・・ダメだ。堪えようとしたけど、無理だった。ヒカリを余計怒らせることはわかっていたが、気付いたら思い切り噴き出してしまっていた。
「も、もう!笑わないで下さい!!」
「ああ・・・わりぃ・・・っはは・・・そうか。あいつにもらったのか。よかったな・・・はは!」
ヒカリがサンタに風船を押し付けられて困惑してる姿を想像したら、さらに笑いがこみ上げてきた。ホントにこいつは一緒にいるだけで飽きない。笑いながら軽く頭を撫でてやると、もうすでに赤くなっているヒカリの顔が一段と赤くなった。
「よ、よくないです!宗介さんのバカ!・・・う〜・・・」
真っ赤な顔をして俺を睨んでくるヒカリ。だが、ちっとも怖くなくて、それは俺の笑いを誘うだけだった。
「まあ、そう怒んなって・・・っはは!」
「い、いつまで笑ってるんですか?!・・・あ!あの子、風船もらえなかったみたい。これ、あげてきます!」