第25章 ふたりの、初めて。 その2
「ああ、覚えてる。ヒカリんちから直接行く」
『・・・へぇ〜』
・・・なんだ?ものすごく含みのある言い方を凛がした。なんか俺、変なこと言ったか?
「・・・なんだよ」
『いや、今日はヒカリんちに泊まるんだなーって思ってな』
・・・しまった。ハメられた。いや、ハメられてなんかない。俺が勝手にボロを出しただけだ。
「・・・・・・」
『はっ!まあいいや。楽しんでこいよ。そんじゃ、また明日な』
俺が何も言えないでいると、凛は言うだけ言って電話を切ってしまった。
・・・凛の奴、電話切った後もまだ笑ってそうだ。明日、会った時の凛の顔を想像するだけで、なんだかうんざりしてきたが、今はそれどころじゃない。
ここまででかなりの時間を食ってしまっている。まず始めに店の中で散々迷い、着替えなんかを買う時も全然違うサイズをレジまで持って行ってしまったり、会計の時財布の中身をぶちまけてしまったり・・・普段じゃ考えられないようなミスばかりをしてしまった。
それもこれもさっきのヒカリの真っ赤になった顔と、これから数時間後に起こるであろうことが頭からずっと離れなかったからだ。
だけど、時間が経てば経つほど、ヒカリは不安になっているはず。もう買い物も済ませたし、早いところ戻ってやらないといけない。
荷物を手に、俺はヒカリを待たせているさっきの場所へと向かおうとした。だけどその時、あるものが俺の目に留まった。
「・・・・・・」
「ヒカリ、悪い。遅くなった」
結局、あの後もなぜか道に迷い、ヒカリから離れてかなりの時間がかかってしまっていた。
通路にあるソファーに腰掛けているヒカリを見つけたので、荷物整理も兼ねてその隣に座りながら声をかけた。
「も、もう!遅いですよ、宗介さん!」
「・・・迷ってたんだよ。悪かった」
「・・・宗介さんの方向音痴」
言いたくないことだったが、怒るヒカリの気持ちもわかったからここは素直に謝っておいた。だが、ヒカリは頬を膨らませそっぽを向いてしまった。普段はこれぐらいのことでここまで怒る奴じゃないのに、よほど不安だったのか、などと思う。