第25章 ふたりの、初めて。 その2
ヒカリと一旦わかれた後、店の中を回って、必要なものを買い揃えていく。大体買い終えたところで、俺は携帯を取り出した。あまり気が進まないが、凛に電話をして頼まなければいけないことがある。
何回かコールした後で、凛が電話に出た。
『宗介?なんだよ、お前。ヒカリとデートじゃなかったのかよ』
「おお、まあな・・・あのよ、凛・・・」
『は?なんだよ』
「やっぱ・・・出しといてくれねえか?」
『は?何を?』
「いや・・・だから・・・外泊届け・・・」
自分の声が小さくなっているのがわかる。実際、かなり気まずい。凛には、今日部屋を出る時に『外泊届け出さなくていいのか?』なんてからかわれた。『んなもん出さねーよ、ばーか』と突っぱねておいて、今更やっぱ出しといてくれ、では相当かっこわるい。
『・・・っ・・・』
「・・・おい、凛」
『っ・・・おう、わかった。出しといてやる・・・はっ!』
気付かれないようにしてるつもりなんだろうが、俺には凛が電話の向こうで声を殺して笑っているのが手に取るようにわかる。そして、耐え切れなくなったのか、最後は噴き出しやがった。
「・・・おい、笑うな」
『ああ、悪い・・・ははっ!』
隠す気もなくなったのか、凛は楽しそうな笑い声を上げている。もう用件はないし、このままだとあまりに俺に分が悪すぎるから、とっとと電話を切ることにした。
「頼んだぞ・・・そんじゃな」
『おう・・・あ、そうだ!お前、明日ハルんちでクリスマスパーティーやるって忘れてねえよな?』
電話を切る直前で、凛が思い出したように言ってきた。岩鳶水泳部の奴らと、俺と凛、愛、百が集まって25日にハルの家でパーティーをする、というのは一週間ほど前に聞いていた。ちゃんと覚えていたし、明日はそのままヒカリと一緒に行けばいい、そう思ったから俺は凛にそのことを伝えた。