第25章 ふたりの、初めて。 その2
久しぶりに会うヒカリ。イヴとかそんなの関係なく、俺だってこいつと一緒に過ごしたい。でも、それでまたこいつの具合が悪くなっちまったら意味がない。
「なあ、ヒカリ。やっぱ今日は・・・」
やっぱり今日は家に帰れ、また今度本当に調子が良くなったらどこか行こう、そう俺が提案しようとした時だった。
「そ、宗介さんっっ!!!」
コートの裾が後ろに引っ張られた。振り返ると、ヒカリが俺のコートを強く握りしめていた。
「・・・ヒカリ?」
俯いているから、ヒカリがどんな顔をしているのかはわからない。だけど、痛いぐらいに握りしめたその手が少し震えているのがわかった。
もしかして、本当に具合が悪くなっちまったんじゃないかと、不安がよぎる。だが次の瞬間、ヒカリがパッと顔を上げた。
「あ、あのっ!やっぱり、うち・・・来ませんか?」
「・・・・・・」
「あのっ!お父さんとお母さん、今日の朝から旅行行ってて・・・明日の夜まで・・・か、帰ってこないんです・・・・・・」
ヒカリの顔、だけじゃなくて耳の先、いや、強く握りしめている指の先まで全部真っ赤になっている。
天然天然と、ヒカリに散々言われたけど、俺もそこまでバカじゃない。今、ヒカリが俺に何を言おうとしているのかぐらいはわかる。
でもお前・・・病み上がりなのに、この前キスしただけでぶっ倒れたのに大丈夫なのかよ・・・・・・そんな風に言おうとした、最初は。
だけど、やっぱりやめた。ここでそんなことを言うのは、ヒカリのせっかくの気持ちや決意を傷付けることになると思ったからだ。
・・・いや、そうじゃない。俺もこうなることをどこかで期待してた。
「・・・ここら辺で少し待ってられるか?」
「・・・へ?」
「着替えとか・・・あと適当に買ってくるから」
「・・・・・・」
「・・・泊まってっていいんだろ?お前んち」
「っ・・・は、はい・・・」
ヒカリの手から、俺のコートがするりと抜け落ちた。小さく頷いたヒカリの目には、ほんの少しだけ涙が滲んでいた。