第21章 すてっぷあっぷ? その1
「・・・・・・」
「・・・ヒカリ?食わねえのか?」
プリンを手に黙ってしまった私を、宗介さんが不思議そうな顔をして見ている。
・・・よし、思い切って言っちゃえ!
「そ、宗介さんに食べさせてほしいなー・・・なんて・・・」
「は?!」
「・・・ダメ、ですか?」
風邪で弱ってるから・・・なのかな。なんだか、すごく宗介さんに甘えたい。
こんな言い方したらきっと宗介さんは・・・
「はっ・・・しょうがねえな。今日だけだぞ」
「ふふ、はーい」
ほら、お願いきいてくれた。自分でもずるいなって思うけど、今は宗介さんの優しさに甘えたかった。
ベッドに腰掛けた宗介さんにプリンとスプーンを渡す。
「・・・ほら」
宗介さんがプリンをすくって、私の方へ差し出してくれる。
「・・・『あーん』は?」
「・・・はっ、甘ったれ・・・あーん・・・」
さすがに『あーん』は言ってくれないかなと思ったけど、ダメもとで言ってみたら、宗介さんは少し笑って私の望みを叶えてくれた。
低くて、でも優しい声が耳に心地いい。
「あーん・・・・・・ふふ、美味しい。宗介さんが食べさせてくれるから、いつもよりずっと美味しいです」
「そうか。よかったな」
嬉しくて嬉しくて、ついつい口元がゆるんでしまう。宗介さんも笑ってくれて、なんだかそれだけで風邪が治ってしまうような気がした。
プリンを食べさせてもらった後、昼の薬を飲んでもう1回熱を測ってみる。だいぶ下がったけれど、まだ37度5分あった。
「また横になっとけ・・・つーか、寝ちまえ。その方が早くよくなる」
「はい・・・・・・あ!ま、待って!」
宗介さんに言われた通り、私はまたベッドに横になる。だけど、宗介さんがベッドから立ち上がろうとしたので、思わずその服をつかんでしまった。
「ヒカリ?どうした?」
「あのっ・・・私が寝るまで、そ、側にいてほしいです・・・」
さすがにワガママかなと思ったけれど、宗介さんが離れていってしまうのがすごくさみしかった。どうしても今は近くにいてほしかった。