第21章 すてっぷあっぷ? その1
「・・・わかった。お前が寝るまでここにいてやる」
「い、いいんですか?」
「おう。だから安心しろ」
「・・・はい」
ベッドに座り直した宗介さんが、優しく頭を撫でてくれる。自分でお願いしたくせに泣いてしまいそうになって、慌てて目を強く閉じてごまかした。
「・・・宗介さん」
「ん?」
「宗介さんのとこって、テスト今日まででしたっけ?」
「おう・・・お前んとこは昨日までだったよな」
「はい。倒れたのがテストの後でホント、よかったです」
「ははっ、そうだな」
眠くなるまでの間は、なんてことない話を宗介さんとした。
私のすぐ近くにある宗介さんの手。なんとなく触れたくなって、そっと手を伸ばしてその大きな手に触れてみた。
ぎゅーっと握ってみたり、手の平同士を合わせて大きさ比べをしたり、指を絡めてみたり。宗介さんは、『くすぐってえよ』なんて少し笑ってたけど、いやがったりせずにずっと私の好きにさせてくれていた。
「・・・宗介さん」
「どうした?」
薬が効いてきたのか、話している間ずっと宗介さんの手を触っていたから安心したのか、少し前から瞼がだいぶ重くなってきた。
「私・・・今日、すごく嬉しかった・・・」
「そうか」
宗介さんの手を両手で握りながら、私は話し続けた。
「・・・私が風邪ひいて寝てても・・・お父さんもお母さんも仕事行っちゃって、いつも一人だったから・・・今日もすごくさみしくて・・・」
「・・・・・・」
「・・・こんな風に風邪の時に誰かが側にいてくれるなんて、もうずっとなかったから・・・」
「・・・・・・」
どんどん瞼が重たくなってくる。段々自分が何を言っているのかさえもよくわからなくなってくる。
「・・・だから宗介さんが側にいてくれて・・・嬉しかった・・・大好きな宗介さんがすぐ近くにいて・・・すごく・・・・・・嬉しかっ・・・・・・」
そこまで言って、私は再び眠りの世界に引きこまれていった。
ぼんやりとした頭の中で、ずっと握っていた宗介さんの手がとてもあたたかったことだけが、はっきりと記憶に残っていた。