第20章 悩める季節 その3
どどどどど、どうしよう?!思い切って言ってみたはいいけど、天方先生ぽかんと口開けちゃってる!どうしよう、どうしよう、でも言ってしまったことはもうどうにもならないし・・・
「長島さん」
「は、はいっ!!」
「・・・そういうことはもう少し小さい声でお話しましょうね?」
そう言うと、天方先生はにっこり笑って、口の前で人差し指を立てた。
それから私はこれまでのことを天方先生に話した。今までずっと宗介さんの気持ちに気付かずにいたこと、そしてそれでも宗介さんが構わないと言ってくれたこと、私がしたくなるまで待つと言ってくれたこと。
2ヶ月近い時間が経ってそろそろ宗介さんに応えなきゃと思ったこと、クリスマスイヴに照準を定めて色々条件も整いつつあるけど、肝心の私の覚悟がまだ全然決まらないこと。
途中でつっかえたり、思い出して赤くなったりしながらだったけど、なんとか私は長い話を終えた。
その間、天方先生はずっと、いつものように優しく微笑みながら私の話を聞いてくれていた。
「・・・長島さんの彼は確か、鮫柄の山崎宗介くん、だったわね」
「は、はい」
「メドレーリレーでバタフライを泳いでいた、背が高い子よね」
「は、はい・・・」
当たり前のことを聞かれて答えているだけなのに、改めて宗介さんのことを他の人の口から聞くと、なんだかくすぐったい気がする。
それに、ずっと宗介さんのことを話しているからか、なんだかいつも以上に顔というか身体全体が熱い。
「・・・ふふふ、いいわね若いって」
「へ?」
「あーもう!そんなことで悩んでたのなんて、何年前になるかしら?なんかもう、キュンキュンしちゃう!!きゃー!もう!!」
そして、天方先生のテンションがなんだか急に上がりだしてしまった。ど、どうしよう、キュンキュンしてくれたのは嬉しいことだけど、今私はそのことで猛烈に困って悩んでるわけだし・・・
「あ、あの、先生・・・」
「あ、あら、ごめんなさい!なんか色々思い出して勝手に盛り上がっちゃって・・・おほほ!」
恐る恐る話しかけてみると、天方先生は普段の調子を取り戻してくれて、ホッとする。