第20章 悩める季節 その3
がしっと腕を掴まれて、見た目華奢な天方先生からは信じられないような力で、私は進路指導室まで引きずるように連れて来られてしまった。
「さ、座って座って!」
「は、はい・・・」
天方先生が椅子を引いてくれて、勢いに押されて私は腰を下ろしてしまった。そのまま先生も私の正面の椅子に座る。
「さ、何でも話してちょうだい!」
「いえ、でも・・・あの・・・」
にこにこした先生の笑顔が眩しい。だけど、さすがにこんなこと、相談できるわけない。どうやって、この場を切り抜けようかな、と頭の中であれこれ考える。
「・・・ね、長島さん」
「は、はい」
急に先生の声の調子が変わって、私は自然と先生の目を見つめる形になった。
「私、長島さんのお姉さん、というには歳が離れすぎてるかもしれないけど・・・お母さんよりはずっと歳も近いし、長島さんのことわかってあげられると思うの」
「天方先生・・・」
「それとね、実を言うと、松岡さんもあなたのこと心配していたの。最近、あなたの様子がちょっとおかしいって、この前相談されたのよ」
「そうだったんですか・・・」
江先輩にまでそんなに心配をかけてしまっていたなんて・・・
でも確かに真冬にコートを忘れてふらふら帰ってしまうようでは、心配されても無理はないかもしれない。
「もし思い悩んでることがあったら話して欲しいの。もちろん、ここでの話は誰にも言わない。松岡さんにも言わないわ。だから・・・ね?」
「・・・・・・」
天方先生が私をとても優しい眼差しで見つめてくれる。江先輩もだけど、こんなに親身になって私のことを心配してくれている。
話しても・・・いいのかもしれない。何でも話していい、誰にも言わない、って言ってくれた。思い切って相談してみてもいいのかもしれない。だって私もう、自分の中だけに留めておけない。限界だ。よし・・・よし・・・
「あの・・・」
「なあに?」
「か・・・」
「か?」
「彼氏とエッチするのに、どうしても覚悟が決まらないんですが、どうしたらいいでしょうか??!!!」
「・・・・・・」