第18章 悩める季節 その1
(眠い・・・)
翌朝。学校へ向かう電車に揺られながら、私はあくびをかみ殺していた。ここ最近、宗介さんとのことと、テスト勉強とであまり眠れない日が続いている。正直勉強どころではないけど、赤点なんてことになったら困るから、なんとか最低限ぐらいは頑張っている。
「はぁ~~~・・・」
またため息が出てしまう。こんなこと、親はもちろん、友達にも先輩にもどんな顔して相談していいのかわからない。だから自分の力でなんとかするしかないんだけど・・・でも、でも・・・
またもやぐるぐると悩み始めてしまった私。
そんな時、隣に座っていたよその学校の女の子二人組の会話が耳に入ってきた。
「ねえねえ、クリスマスって何か予定ある?」
「あのね・・・実は、イヴの日に彼氏がね・・・・・・・・・」
「えええぇぇ?!その日、誰もいないからって家に誘われたの?!!」
「しーっ!!声が大きいよ!・・・でも、それってそういうことだよね?」
「うん、そういうことだよ!!ついに?!」
「・・・うん、ついにだよ。ああ、もうどうしよう?!」
「あ!もう降りなきゃ・・・ねえねえ、それでさ・・・」
そんなことを話しながら、二人は電車から降りて行ってしまった。
・・・わああ、朝から他の人もいるのになんて話してるんだろう。こっちが恥ずかしくなってしまう。
でも・・・多分前の私だったら『誰もいない彼氏の家に行く』ということが何を意味するか、なんてわからなかった。
そっか・・・そういえばもうすぐクリスマスなんだなあ・・・・・・クリスマス・・・・・・クリスマス・・・・・・うん、いいかもしれない。
さっきの子を真似するわけじゃないけど・・・クリスマスイヴ、いいかもしれない。なんかものすごくベタな気がしないでもないけど、どうせなら特別な日の方が思い出に残りそうだし・・・
とりあえずクリスマスイヴ、って照準を定めてしまって、肝心の私の覚悟の方は・・・えっと・・・えっと・・・なんとか頑張ってそれまでに決めればいいか、ってことで・・・・・・
・・・でも待って!!場所、どうしよう?さっきの子は彼の家、って言ってたけど、宗介さんは寮住まいだし、そんなことのためにお家に行ってもいいですか、なんて言えるわけない。