第16章 with you
「・・・・・・」
「・・・・・・」
どうしよう。何を宗介さんに言ってあげたらいいのかわからない。こんなこと、私が口出ししていいことじゃないし・・・
沈黙が重い。
でも何か、何か宗介さんを元気付けられるようなことを言わなきゃ、と私が必死に言葉を探している時だった。
「・・・なあ、ヒカリ。お前はどう思う?」
「へ?」
「・・・・・・俺が水泳やめるの」
「・・・・・・」
突然の問いに言葉が出てこない。こんなこと聞かれるなんて思ってもみなかった。私がどう思おうが、それは宗介さんが決めることだから・・・とずっと考えることから逃げてきた気もする。
宗介さんの瞳がじっと私の瞳を見据えている。こんな時、私はどうしても宗介さんから目をそらすことができなくなってしまう。
「・・・あ、いや・・・やっぱいい。こんなのお前に聞くことじゃねえな。悪い」
ふっと宗介さんが私から視線を外した。雰囲気もいつもみたいな優しい感じに戻って。
「私っ!は・・・」
だけど私はもう決めた。ちゃんと考えて話すって。さっき見つめられた宗介さんの瞳がとても真剣だったから、それに応えたいと思った。
「・・・私は、宗介さんの泳いでる姿がとても好きです・・・大好きです。初めて宗介さんの泳ぎを見た時は、息をするのも忘れてしまうぐらいで・・・もう、宗介さんしか見えなくなってしまいました・・・」
「・・・・・・」
宗介さんは何も言わずに私の話を聞いてくれている。改めて告白しているようで、その恥ずかしさに頬が熱くなっていくのを感じたけど、それでも私は続けた。
「だから・・・宗介さんが水泳をやめてしまうのは・・・かなしい、です。とっても」
「・・・・・・」
きちんと宗介さんの目を見て伝えると、宗介さんも私の視線を受け止めてくれた。宗介さんの瞳が少し揺らいで胸が苦しくなる。
「でも・・・」
「・・・・・・」
「でも・・・私が好きなのは・・・『宗介さん』だから・・・水泳を続けても、例え・・・やめても、それは『宗介さん』だから・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・宗介さんがこれからどんな道を選んだとしても・・・私はその隣にいたいです・・・ずっと・・・・・・」
「・・・・・・」