第15章 同じクラス、隣の席
「もう!いいんです!今はそういう設定なんです!」
「・・・あー、はいはい・・・わかったよ」
少し怒ってそういうと、宗介さんは仕方ないな、と言った感じで納得してくれた。
「えっと・・・あと今日は私が教科書を忘れたという設定なので、机をくっつけまーす・・・よいしょ」
「はっ・・・設定多いな・・・ほら」
立ち上がって机を宗介さんの方にぴったりくっつけると、宗介さんは笑って机の中から教科書を出してくれた。
「あ、教科書置きっぱなしなんですね」
「・・・お前だってそうだろ」
「テスト前は持ち帰りますよ!」
「はっ、俺もだ」
教室の電気はついていなかったけど、外灯のおかげで十分明るかった。宗介さんが開いてくれた数学の教科書に目を落とす。
「・・・さっぱりわかりません」
「ははっ、だろうな」
「だ、だってしょうがないじゃないですか。これ、3年生のだし・・・」
「おかしいな・・・俺ら、同じクラスなんだろ?」
宗介さんはにやりとした顔で私の方を見てる。
「う~、宗介さんのいじわる・・・もう!今は授業中って設定だから、おしゃべりはやめましょ。そのかわり・・・」
「おい、まだ何かやんのか?」
呆れ顔の宗介さんをよそに、私はバッグの中からノートとペンを2本取り出した。
「はい、宗介さんもどうぞ」
「は?何すんだよ」
宗介さんにペンを1本渡して、ノートの何も書いてないページを開く。そして、ペンで書き込む。
『好き』
ノートを宗介さんの方へずらして、じっと期待に満ちた目で宗介さんを見つめる。つき合ってくれないかな?って思ったけど、宗介さんは小さくため息をつくと、ペンを手にしてくれた。
『俺も』
宗介さんの字。そういえば見るの初めてかもしれない。少し雑な感じがなんとなく男の子っぽい。
『俺も?何ですか?』
『言わねえって言ったろ』
『書くんだからいいでしょ』
しばらくそんなやり取りを続ける。書いてくれるぐらいいいのになあ、なんて思っていたら、宗介さんは少し時間をかけて何かを書き込んでいる。渡してくれたノートを見ると、なんと『うるせえ、この』の後にいちごのイラストが描かれていた。
「あ!ひどい!」
思わず、大きな声が出てしまう。