第3章 「耳弱いんだな」
それを吉村がジト目で見ながら
言う
「愛川さんに手出しました?」
「ん?」
「目潤んでたし
スーツのボタン開いてましたし」
「まぁ味見程度には?
あの子たぶん処女だわ
だからここでヤルわけには
いかねーだろ」
「いや処女だろーが
そうじゃなかろうがダメでしょ?」
「まぁそうだな!」
吉村の言いたい事がわかり
引き退る
「付き合う前だし
彼女が初めてなら尚更ね?
それに本気なら慎重にいくべきでは?」
「ん?気づいてたか?」
「ええ!代表のタイプにストライクでしょ?」
吉村の言葉に笑いながら言う
「さすが鉄の女だな!」
「まぁ付き合い長いですからね
というかそこは付き合い長いだけあるなとか
ないんですか?」
呆れるように言われる
「わりぃわりぃ!
今日、飲み付き合ってくんね?」
「いいですよ!一杯か二杯なら!」
「ただし俺の店の客に手ぇだすなよ?」
「分かってます…あの人来てるんですよね?」
「ん?龍也(りゅうや)か?
来てるぞ」
ニヤニヤしながら言う俺に
心底嫌そうに吉村が言う
「ホントにあなたはドSで
人を追いつめるの好きですね
本気の子にだけしてもらえません?」
「ん?やっぱりまだこじらせてたのか?
もういいかげん
覚悟したらどうだ?
自分の気持ちに気づいてるんだろ?」
「………」
「この機会に素直になってみたら
どうだ?」
「分かってます………」
渋ってるように見えた俺は
背中を押すきっかけになればと
思い口を開く
「そう簡単に吹っ切れるような事じゃないのは分かっているんだ
でも俺はお前に女として
幸せになってもらいたいんだ!
男になりたいわけじゃないんだろ?」
「女として………」
「俺はアイツならお前を
任せられると思う
それは俺らが高校の時から思ってた事だ!
このままズルズルいってると
後悔する事になるぞ?
それにアイツに気がないんだったら
もう解放してやれよ…」
「わかりました…もう決心つきました!」
吹っ切れた顔で笑う吉村
「そうか!あんないい男
逃すのもったいないぞ?」
「ふふっ代表
着替えしなくてもいいんですか?」
「んーまぁこの時間だし
大丈夫だろ?」
俺のお節介と二人への親心のせいで
この決断が最悪な事態を
引き起こすとは
この時思わなかった!