第8章 “声”
「信用する気になったか?」
笑うなつに秀吉は、認めるしかないと悟った。
「ああ、分かった。だが、本当に・・・」
「しつこい。私は確かにこんなだが、自分から言い出した約束は守る。」
「つまり、人から告げられた約束は守らないと。」
「それは、内容によるな。」
それがどうした、と言いたげななつの笑みに秀吉はため息を吐くしかなかった。
「ったく、こんな世話の焼ける妹が出来るとはな。」
「フフ、だが放って置けないんだろう。」
なんったって、大好きな信長の気に入りだからな。
「おう、なんたって俺の恩人だからな。」
「貴方のじゃない。信長だろ。」
「ああ、正確にはそうかもな。だが、信長様は俺の生きる意味だ。」
そう言って笑った秀吉に、なつは違和感を感じたが、追及はしなかった。
それから、夕餉を共にし、秀吉に城まで送ってもらい、なつが自身の部屋に帰った時には子の刻を回った所だった。
「ふう、やはりこんな時間か・・・羽黒。」
秀吉の気配が完全に消えたのを確認して、縁側へ行き、羽黒を呼べば、華麗に舞い降りてきた。
「フフ、やはり蜜姫は信長のところか。」
なつは羽黒から信長の所在を確認し、部屋へ戻っていった。