第8章 “声”
信長は部屋に戻るが、やはりなつの姿はない。
取り敢えず、着替えを済ませ秀吉たちに何と言い訳をするか考えていると・・・
「只今、戻りました。」
ストンと、天井裏から現れ、信長の前に膝を就く。
何故か、既に着替え終わり、着物を着ているなつに信長は感心する。
「悧月、ご苦労だった。さっそく報告をと行きたいところだが、なつが行方不明だと、城内が騒いでいる。先に姿を見せてこい。」
「御意。それについては、羽黒から聞いていますので、合わせておきます。」
なつは顔を上げると、いつもの笑みを浮かべる。
「フフ、仕方ない。秀吉の説教でも聞いてくるか。」
「ああ、急ぎはあるか?」
「明日でも問題はないでしょう。今宵は、多分、つぶれるだろうからな。」
なつは苦笑しながら、天守を後にした。
「おい、本当に天守にいると思うか?」
「分からん。だが、なつがしょっちゅう天守に顔を出していたのは事実だ。」
「何の話だ?」
「「「なつ!!」」」
「あんた、今まで、どこにいたの?」
「どこって、昼間は城下をふらついて、その後は天守にずーっといたが?」
「「「・・・」」」
「少しは控えろ。城の皆がどれだけ心配したのか分かってるのか?!」
声を荒げた秀吉に、政宗も家康も始まったと、さっさとその場を退散した。
「フフ、私が自由気ままなのは最初からだろう?」
「それは分かるが、人に心配をかけるのは違うだろう!!」
「そう、怒るな。確かに、今回は悪かった。だが、私のことは放って置けと何度も言ったはずだ。」
なつは笑みは浮かべているが、明らかに鬱陶しいと言う空気を纏う。
「放っておけるわけないだろ。今までの俺の態度は・・・済まないと思っているが、それ以上に、感謝だってしてるんだ。心配しないわけないだろう。」
「はぁ・・・ならば、こちらも少し気を付けるようにはするが、私は元々、束縛されるのは苦手なんだ。城を1日、2日空けることに関しては、目を瞑れ。」
「だから、空けるときは、誰かに言えと言ってるんだ。」
「それは無理に決まってるだろう。気の向くまま。に動いているんだからな。」
お互い、意見を譲る気はないとにらみ合う。