第7章 “仕事”
信長たちが、捉えた顕如の手下を連れ安土城に戻れば、どういうわけか城内はバタバタしていた。
「何事だ?」
「あ!これは信長様!!お帰りなさいませ。」
気付いた1人の兵が膝を就く。
「何かあったのか?騒がしいが・・・」
「実は・・・なつ様が行方不明でございます。」
「何?どういうことだ?!!」
そう言えば、彼奴の所在について決めていなかったな・・・
「政宗様のお話ですと、信長様たちがお立ちになった朝より、お姿が見えなかったとのこと。今、家康様の家臣が総出で探しております。」
「・・・秀吉。」
「は!俺も捜索に」
「家康に全て引き上げさせるよう伝えろ。」
「は!・・・え?ぃ・いえ、どういうことですか?」
「あれは、多分天守におる。」
「どういうことです?」
「碁で賭けをした。」
「え?」
その言葉に、蜜姫が反応するが、今は構っている暇はない。
「不覚にも、負けを取っていしまったんだが、あれの望みが、天守への自由な出入りだった。と言うだけだ。」
悠然と答える信長の内心は、なつとの蜜事を隠すための計算でいっぱいだった。
「つまり?」
「あれが、いなくなったとて、天守までは探すまい?」
「確かに、そうですね。」
「俺は、部屋に戻る。もし、そこにもいなければ、手を打とう。」
信長は、言うと足早に天守へ向かった。