第3章 真実と現実~2~
「まさか、こんな形で信用を得るとはな。」
「貴様、本当に香に気付いたのか?」
信長の言葉に、なつは更に口角を釣り上げた。
「言っただろう?暗殺や密偵をしていたと。当然だが、夜目も鼻も耳も良いぞ?」
「なるほど。この間の話、詳しく聞こう。」
今までのような笑みはなくなり、信長の真剣な目がなつを射る。
そんな信長の視線にさえ、笑みを消さず、なつは天守からせり出した欄干に手を掛け、片手で口笛を吹く。
ピィー
その音に、大きな鳥が姿を現した。
「羽黒?!」
「フフ、貴方の・・・だろう?」
「どういうことだ?」
羽黒は、華麗になつの腕に止まるとクリっとした目を信長に向けた。
「私は、動物の“声”を聴き話すことが出来る。」
話しながら、羽黒の喉元を人差し指で撫でてやると、羽黒は気持ちよさそうに目を細めた。
「まぁ、全てではないがな。1人で動ける要因の1つだ。」
「伝令を鷹や鷲に頼むと言うことか。」
「その通りだ。」
「益々面白い。良いだろう。貴様と俺だけの秘密だ。
何かあれば、羽黒を使おう。」
2人は笑みを交わし、なつは自室へと戻っていった。