第13章 思惑2
一方、信長たちは、七里たちを縛り上げ、近場の演習場から隊を1つ動かし、城へ戻る手はずを整えていた。
「お館様、なつは?」
「・・・先ほどまでここにいたはずだが。」
気付いてはいるが、信長は首を傾げて見せる。
「私が、どうかしたか?」
そこへ、雑木の中からなつが姿を見せた。
「こんな時に、どこへ行ってたんだ!」
「秀吉、うるさい。それよりも、早々に城に戻るんだろう?」
なつの言葉に、信長が号令を掛け、一同は足早に城へと向かった。
「悧月、首尾は?」
「上々です。光秀には居所のみ伝えるよう、文を渡しましたが、予定通りことが運ぶでしょう。」
行きと同様、信長の馬に一緒に乗るなつは、小声でこの後のことを話し合っていた。
七里一味を捕縛し城に戻り、秀吉は光秀の元へ向かおうとしていた。
三成やほかの織田軍の家臣も、秀吉に同行しようと城門に集まっていた。
すると----そこへ当の光秀が、一人で歩いてきた。
「光秀様・・・・!」
「七里殿が捕まったと聞いてな。取り急ぎ、信長様に取り次げ。」
「・・・・・?」
家臣1「どういうことです!!」
家臣2「七里の証言もある、言い逃れはできんぞ!」
「ここで、やり合っている暇はない。」
「なんだと・・・・?」
「信長様に今後の方針を仰ぐ。」
飄々と笑う光秀の胸倉を秀吉さんがつかみ上げ、場が騒然となったという。
「秀吉様・・・・・」
「どういうことか、ちゃんと話せ!」
「こうなった今、時間が惜しい。とにかく、皆を集めろ。」
「・・・三成。」
「承知しました。」
光秀はすぐにいつもの読めない笑みを浮かべ、秀吉の胸を突き返した。