第6章 破滅【完】
エルヴィンSide
だいぶアイの体温が戻り始めたと感じた時
アイは私から離れて胸元に手を入れる
『お父さん、これを…」
そして、折り曲げられた書類を取り出し私にそれを手渡した
エルヴィン「あぁ、良く手に入れてくれた。感謝するよ、アイ」
『ふふっ、お父さんに褒められるの随分と久しぶりね』
ほんのりと温かいその書類を広げ中を確認する
エルヴィン「…成る程、充分すぎる程の証拠だ」
これがあれば、ロヴォフを追い込むのも容易い
数日の内に、例の地下街の人物と接触を図って来ることだろう
エルヴィン「本当に良くやってくれた、これで全て上手く運ぶことが出来そうだ」
『良かった。…ねぇお父さん、少しだけ我儘言ってもいい?』
そう言って恥ずかし気に私を見上げるアイ
エルヴィン「フッ、あぁ…何でも言ってごらん?」
思えばアイがこんな風に甘えて来る事など随分と久しぶりだ
いや、甘えさせてやれなかったと言った方が正しい…
せめて今だけは只の父親と娘に戻って、日が昇るまでの数時間を共に過ごしたいと心から思った
『今日はお父さんの部屋で一緒に寝たいの』
エルヴィン「あぁ、構わないよ」
『ふふっ、嬉しい』
まるで幼い子供に戻ったように甘えるアイ
その冷んやりとした髪にそっと口付けを落とす
エルヴィン「愛しているよ」
『っ!…私もよ、お父さん』
普段口下手な私のその言葉に目を見開くアイだったが、直ぐに満面の笑みで私に抱きついた
いつかアイに心から愛する男が現れるまでで構わない
それまでは私の…いや、私だけの愛する娘でいて欲しい
そんな私の勝手な我儘は心の中だけに留めておくとしよう