第4章 破滅【奪】
アイSide
ロヴォフの屋敷に来てから丸一日が過ぎた
私がここに来てからというもの、ロヴォフは私に対し沢山の贅沢品を与えてくる
王都でも限られた人間しか手に入らないであろう、高価な服やアクセサリー
それらで私を飾っては満足気に眺めたり、食事やお酒もウォール・マリアやウォール・ローゼでは手に入らない食材を使った物ばかり
何より、このウォール・シーナの地下街では食べ物にもあり付けない人達がいるというのに
さも当たり前の様に振る舞うこの男には心底嫌気がさした
ロヴォフ「アイ、お前も飲むといい。この辺りでもなかなか手に入らないワインという酒だ」
『そんな貴重なお酒…本当に宜しいのですか?』
ロヴォフ「あぁ、遠慮せずに飲みなさい』
まだ昼間だというのにワイングラスを優雅に傾けるこんな男でも、形だけはかなり影響力のある議員らしい
この男一人の醜い欲が、人類の反撃の足枷となっているのだと思うと
今すぐにでも拘束して、そのまま壁外へ投げ飛ばしてやりたい気持ちに駆られる
恐怖を目の当たりにして思い知ればいい…
無知であるが故に己が巨人に反撃する術を持たない事を
そして巨人の口に入る瞬間に初めて気付くだろう
お金なんて巨人の前では何の意味も持たない"無力"だという事を
なんて…
自分でも恐ろしい程物騒な考えが頭を過ぎる
まぁ…でもそれは
結果的に今やっている事と何ら変わりないのかもしれない
だってこの男にとって私は
地位・名声・富…今までこの男が得て来たもの全てを奪う
"悪魔"なのだから