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キミ色に染めて

第1章 真っ白


帝光中学校、校門前。

時刻は黄昏時。

背中まで伸ばした黒髪が、風に揺られてふわりと浮く。


「ここかぁ……」


子どもにしては少し大人びた声。

ぽつりと呟かれた言葉は、彼女がここに初めて訪れたことを物語っていた。

長い睫毛に縁取られた瞳は、期待と不安が混ざって溶けている。


「先に職員室かな」


手元にあるのは帝光中学の校内パンフレット。

1ページは学校の教訓やら教育方針が載っている。

2ページ、3ページとページを捲れば、お目当の情報が。


「ママに聞いてたけど、広いなー」


以前の学校と比べてしまえば、帝光中学はその倍ありそうな程広かった。

彼女、真白 あやめは明日からこの学校に転入する事になっている。

良くある親の事情というやつで、昔から引っ越しを伴う転入はもう何度目か数えるのを止めてしまった。


「今回はどれ位通えるのかな……」


引っ越しは嫌では無いが、あまりに短期スパンの為あやめには友達と呼べる子は少ない。

学校行事にも参加出来た試しが無く、彼女の学生生活の色は白い。

決して内向的な性格では無いのだが、仲良くなろうとするといつもタイミング良く引っ越しが決まるのだ。

それは親の仕事柄、仕方のない事だとは割り切っても。

青春に憧れる。


「くよくよ考えても進まない。早く行こ」


頭(かぶり)を振り、あやめは目的地へと歩みを進めた。





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