第2章 見つけないで○○
成績順に校舎は建てられており、手前が成績の悪いお嬢様の校舎のあやめ。少しばかり貧相な木造建築の古めかしい雰囲気漂う校舎だ。
私と瑛美はその横を通りすぎてもう少し歩いて行く。
「だからさ…ねえ!話聞いてる?」
「あいてっ」
瑛美に制カバンで叩かれてはっと目を覚ました。いつのまにか成績普通くらいのお嬢様がいる校舎、牡丹を通りすぎていた。
そしてひときわ豪華な輝きを見せるまさにお城といってもいいくらい立派なつくりの校舎は、成績優秀なお嬢様ばかりを集めた校舎、百合の校門にさしかかっていた。
その名の通り、校舎の周りには百合の花が一年中咲き誇り、真っ白い外壁には汚れすら見当たらない。
百合の校舎に入ってもいい相応しい生徒だということを証明するカードを校門の端にかざすとロックが外れる音がして自動で扉が開く。
もし、万が一あやめの生徒が入ってきたとしてもカメラでそれを捉え、その瞬間にアラームが鳴り、その生徒の情報を大音量で流すようだ。
私はまだその音声を聞いたことがない。
百合には牡丹にもあやめにもない食堂と図書室が付いている。これらは出入りが誰でも自由だ。
「数学の先生なんだって!よかったね、玲香面倒見てもらえるじゃん」
「…数学なんて勉強してどうにかなるもんじゃない気がする…」
私はがっくりと肩を落とした。
このテスト前の時期によりによって数学の教師とは補習が増えるだけだ。
百合校舎の前に私は立つとカードをかざす。ガチャンと音がした後に扉があく。
校門を通って校舎に入るときらびやかに輝くシャンデリアが私たちを出迎えた。