第2章 見つけないで○○
「次からはダメだからね」
瑛美は私の頭を小突く。私は小突かれたところを軽くさすった。
その約束は守れそうではないが、と心の中で呟くと髪を整えた。
「善処するわ」
そう言った私を疑わしそうな目で見てくる瑛美だったが、ぱっと表情を変えて私の腕を興奮気味に掴んだ。
「今日から新しい数学の先生来るんだって!」
「この時期に?」
今は五月だ。四月に普通来るものではないのだろうか。
私は瑛美の腕を軽く引き離した。
「なんかやらかした先生とかじゃないの?」
校門が見えてきて辺りを歩く生徒も増えて来る。
よく耳をすますと他の生徒も今日くる先生の話題で盛り上がっているようだった。
「え〜、でもかっこいいらしいよ」
私たちは校門をくぐる。華やかなお城のような校舎がそびえ立っている。
横でわいわいと騒ぐ瑛美よそに私は校舎に目を向ける。
この私たちが通う聖マリアンヌ女学院はいわゆる豪華絢爛な世界に住むお嬢様が通うお嬢様学校だ。私の横でまだ騒いでいる瑛美も有名企業の社長のご令嬢だ。他にも元総理大臣の娘や一流レストランのシェフの孫など様々なお嬢様がいる。
なぜ私がこの学院に通っているかというと、聖マリアンヌ女学院は成績の優秀な者に対して出る補助金がある。私は死にものぐるいで勉強し、この学院に首席で入った。だからこのお嬢様学校に通えてるのである。