第3章 暴かれた○○
『…あっ、やっと出てくれたんやね』
「何度もかけられたら出ますよ、シャワー中だったんです」
私は濡れた髪を拭きながら白いソファに座った。電気をつけるのもめんどくさく、手元のスタンドランプをつけるだけだ。
『やだ、お姉に対しても敬語なん?遥ちゃん』
電話越しにキャハハという耳障りな笑い声が聞こえる。
私はケータイを握りつぶしたくなったが、壊れて困るのは私だ。
「で、要件はなんだ」
姉の要求通りに敬語をやめて話を続ける。
『父さんがね、遥和はこっちでどうするんだって言ってはるんよ』
「だからもうそっちには戻らないって言っているだろう」
ふつふつとした怒りを感じた。父はいつもそうだ。私はコップに水を入れ、氷をいくつか入れた。
『でもな、綾瀬家の長男あんたしかおらんし、もう父さんも長ない…今、白神家との抗争もひどくなってきとるし、綾瀬家をまとめるもんおらんとやってかれんかもしれんのよ』
カラン、と氷が回る音が部屋に響いた。
「…少し考える」
『あんた、なんかおかしいで。そっち行ってなにしとるんよ。家のもん何人かとルカそっち派遣しとるらしいし、なにがしたいんや』
「たのしいこと」
私はそれだけ言うと電話を切った。