第1章 穢れた○○
明るい街の光は月の光を掠めていた。
コツコツとパンプスのヒールが鳴る音が響き、真夜中の街を私は歩く。
人の少なくなった駅で待ち合わせしている男の姿が見えて私は少し歩調をゆっくりした。
お腹はぽっこりと膨らみ、パンパンに肉の詰まった手足。春なのにじんわり汗ばんでいる額に毛が張り付いていて気持ち悪い。
ーそういえば、初めてだったか
「こんばんは、ヒロキさんかしら」
私は優しい笑みを口に浮かべておじさんに話しかける。
おじさんはあたふたした様子で頷いてみせた。
それもそうだろう。
「きっ、君がミカちゃんなのかな、すごい綺麗だねっ」
綺麗にしてきているのだから当たり前だ。聞き飽きた言葉に私は会釈をするとおじさんの腕に自分の腕を絡ませた。
「夜は短いの、こんなところで駄弁るなんてもったいと思わない?」
そうして私とおじさんはネオンの光へと吸い込まれた。