第2章 見つけないで○○
無事に授業を全て終えて私は誰もいなくなった教室で本を読んでいた。
家に帰れば父親に殴られる気がして下校時間ギリギリまで教室にいるのが毎日だ。
ふと教室の扉が開かれる。扉のほうを見てみるとペットボトルを二本持った瑛美がにこりと微笑みかけながらこちらへ向かってきた。
百合校舎の中でもトップクラスに賢い椿組はどこの教室に出入りしても良いのである。
瑛美は私の隣の席にちょこんと腰を下ろすと、私の大好きな紅茶のペットボトルを差し出した。
「ありがとう」
私はそれを受け取るとキャップを回して喉に流し込む。ふわりと広がるフルーティな甘みが大好きだ。
一方の瑛美はオレンジジュースを買ってきたらしく飲まずにラベルの剥がすところに爪をたてて遊んでいた。
「今日も8時まで残るの?」
「うん、家に帰りたくないの」
私は引き出しから今日出された宿題を取り出した。私たち2人しかいない教室は夕日でオレンジに染まっていた。