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【S×A】だから人生は素晴らしい

第4章 ありふれた日常






持ち帰った仕事をしながら


書類を取り出そうと開けた引き出しには


茶封筒が無造作に置かれている






それを受け取ったのは、一週間前のこと






――――……





「……とりあえず。

足りないんだけどごめんね」



そう言ってアイツは、

いかにも手にしたばかりの真新しい封筒を、俺に差し出した




今さら、あの皿はそんな高価なものじゃなかったと話したところで、


それに、なんの意味があるのか


それを口にした時点で、
俺の人生に支障をきたすくらい、分かりきってる






残りを払う気でいるだろうから、必ず近いうちに来るだろう


その時にでも、適当に返せばいい




それで……全部オシマイだ






引き出しに封筒を入れたまま、そっと閉じた





それから、1時間ほど経った、
来客なんか来ないはずの時間帯に、インターホンが鳴る




思った通り、
ふらりと現れたヤツは




変わらない笑顔と、人懐っこい態度で……


相変わらず、だらしない格好でさ







「コーヒーくらい飲んでくか?」




玄関先でそう促し、

リビングに身体を向けたけど、マサキは笑顔で首を横に振った






「残りのお金、返しに来ただけだから。

ありがとね、しょーちゃん」

「……マサキ

お金だけどさ、もう充分だし…」




俺の言葉も聞いてないのか、
無視するように、封筒を差し出す





「そんなわけにはいかないって!

ね、これで足りると思うんだけど」




無理矢理掴まされたそれは、想定外の厚みで





「ちょ、こんな受け取れねーよ!」


「いいって!お礼込みだから」









あっという間だった


終始笑顔を振り撒いて



もう、2度と会えないに違いないのに







「バイバイ、しょーちゃん」






アイツは、あまりにも簡単に


呆気なくさよならを口にした





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