第4章 ありふれた日常
「ねぇねぇ、シャンパン、開けてもいい?」
にーっこり笑顔で、
上得意のお客様に、甘えて見せる
頷いたのを合図に、
市販では考えれない値段のボトルを、黒服が運んで来た
グラスを持ち上げ、差し出すと
受け取ったお客様に、
ピンクの液体を注ぐ
「マサキくんも飲みましょ」
「いいの?
ふふっ、ありがと」
促された空のグラスに受け取り乾杯して
アルコールを流し込む
正直、イイ酒の味なんかわかんないけど
「マサキくん、お代わり欲しいなぁ」
「お代わり?
ふふ…いいよ」
彼女の手からグラスを抜き取り
それをグイと傾けて、
彼女の腕を引き寄せると
頬を包み、
合わせた唇の隙間から、それを流し込んだ
「……おいし?」
上目遣いで彼女を見つめたら
嬉しそうに、俺に身体を寄せて
また、新しいボトルを入れてくれる
「仕事中なのに、酔っちゃいそう。
マサキくん、
今日は何時上がりなの?」
すっかりその気になっちゃったお客様が
媚びた眼差しで俺の太股に掌を這わす
こーゆーのは、
ルール違反なのになぁ……
それに、ほら
先輩の視線、怖いって
「ごめんね。
今日は先約あんの。
残念だなぁ~…、ね?
今度、俺から誘ってもいい?」
こそっと、耳元で囁くと
機嫌を損ね欠けたお客様も、
次の来店まで約束してくれちゃうし
……でも、まぁ
その時は俺、辞めちゃっていないかも知れないけど