第4章 ありふれた日常
鍵を挿し込み、ドアを開けると
外と代わりない冷気と、
リビングからの灯りが漏れていないことに気付いて、
……マサキが居ないことがわかる
パチンと照明のスイッチを押し、コートをソファーに掛けた
残業して帰ったのに、
こんな時間にアイツ、どこ行ったんだ?
朝は何も言ってなかったよな?、と
いつも通りの朝の光景を思い浮かべる
「ま、アイツの勝手だからな」
ただの同居人なんだから
束縛する理由なんてないんだし
ただ、アイツは、俺に"貸し"があるんだから
勝手なことされても困るんだよ、って思う
風呂に入って、バスルームを出た時、
遠慮がちに鍵を開ける音が響いて、
廊下でマサキとはち会った
「……おかえり」
いつもなら、言われる側だから、
妙な違和感が芽生える
「ただいまっ……ごめんね~!遅くなって」
「いや…、いいけどさ」
「しょーちゃん、ご飯は?」
「適当に、会社で」
「そっか。それなら良かった」
「お前、風呂は……」
「え…、あ~、うん。入ろっかな~」
出迎えたから、だけじゃない違和感
確かに香った、知らないニオイ
香水か
コイツのもんじゃないことくらい、直ぐにわかる
すれ違い様に、感じた香りは、
マサキがバスルームの扉へと消えた後も
微かに残って……
無意識に、溜息を吐いた