第4章 ありふれた日常
遠くに聞こえる音が、段々と鮮明になってきて
俯せの身体を捻ると、枕元を手探りで動かした
右手にぶつかった塊を強めに叩くと、
部屋中に響いてた機械音が、ピタリと途切れる
「オムレツ…作んなきゃ」
夜中のやり取りを思い出す
元々ね。
昨日は予定入ってない、ってゆーからさ
俺、ご飯作って待ってたのに
そりゃ、勝手に作ったけどさ
連絡ひとつないんだよ?
そしたら、すげー酒臭いし!
ソファーで寝込んじゃうし!
運ぶの、ホンッと大変だったんだからね!
そんで、朝食べたいなんか言うしさ!
俺、早起きしなきゃじゃん
……したけど!
ボウルに卵を3つ割って、
牛乳を適当に加えてから塩コショウする
ぐるぐるかき混ぜながら、フライパンを火にかけた
バターを入れると、
ジュー、と溶けてキッチンにいい匂いが広がる
一気に投入した卵が、昨日と違う固まり方をしたから……嫌な予感がした
フライパン……加熱し過ぎた…かも……
内心焦りながら、箸を動かしてはみたけれど……
「だから言ったじゃん!昨日のは、最高傑作だって」
昨日とは明らかに違う出来映えを、
しょーちゃんのせいにして、皿に乗せた
でも、さ……
さすがにちょっと怒るかな?
フォークで突っついて、ひとくち頬張ってみたけど
お世辞にも美味いとは言えない
一瞬、ケチャップで誤魔化そうか迷ったけど、
冷蔵庫から新しい卵を取り出して、同じ工程を繰り返した
「美味しそう…だよね」
最後の卵でトライしたオムレツを、どうにか納得して
たまった洗い物を片付け始めた
その時だ
リビングにインターホンが響く
泡だらけの手を慌てて流して、スウェットで拭きながら玄関に向かった
「ハイハーイ」
2度めのインターホンに返事しながら、
壁に手を当てて身体を伸ばすと、勢いよくドアを開けた
「あ、れ……?
ちゃん……?え?なんで?」
なんで…?
ちゃんがここに??
友達…?
彼女、なワケないよね
「びっくりしちゃった!
ちょっと待ってね。しょーちゃん起こしてくるから」
いまいち状況が飲み込めなかったけど、
廊下を走り、しょーちゃんの部屋に向かった