第7章 願うのはひとつ
大事な話だから、落ち着いた所で会いたいと言われ
アリサさんが家まで迎えに来てくれる事になった。
アリサさんが私を可愛がる様子に、ママはまた感激して、見送る。
綺麗な笑顔。同性でも見惚れるくらい愛らしい。
車に乗せられ、行き場所も告げられないまま、何処かへ走り出す。
「突然ごめんなさいね。
本当は、もっと違う理由で貴女とは仲良くなりたかったのに…」
それさえ、疑いを抱く私の方が警戒し過ぎなのかな。
「フレンチは好きかしら?このお店、うちの系列なの。
気にいってくれると嬉しいわ」
1番奥の部屋に通され、向き合って座る。
緊張感と違和感は拭い去れなくて…
そんな私の心中なんて、お見通しなんだって思うけど。
「あの人のこと
好きだっていうの変わってないわよね?」
そう切り出したアリサさんは、
次々に話しだした。
「彼の身元とか、そういうの全部知ってるの?」
「マサキさんの身元?」
「何も知らないのに好きになったの?」
呆れたような表情を見せた彼女に、
やっぱり私とは合わないって思う。
人柄や雰囲気、その人の醸し出す空気なんか、きっと好きになる理由にはならないんだ。
私が聞いてもいないのに、マサキさんの家の事や過去。
そして、お兄ちゃんとの事も、全部聞かされた。
知らなかった話も、想像していた事と重なっていて
その事実よりも、すべて把握しているアリサさんに驚いた。
「……だから、
お互いの為に協力出来たらと思うの。
マサキさんだって、あなたと一緒になった方が幸せになれるわ。
絶縁状態になってる家族だって、本当は帰ってくるの望んでるんだから」
「…それ、ホントですか?」
「本当よ。長男が亡くなって、
跡取りはマサキさんだけだもの。
今は現役のお父様も、後継者には血縁者を望んでるようだし。裏では息子の居場所を調べさせてる」
どんな思いを抱いて家を飛び出したか。
私なんかが想像出来ることじゃないけど、帰ってくる事を家族が望んでる。……その事実を知るだけでも、マサキさんは救われるのではないか。
「でも
私が出来ることなんて…
私、もう振られてますから」
マサキさんが好きなのはお兄ちゃん。
ふたりは想い合ってるんだから。