第4章 ありふれた日常
毎日を淡々と過ごして……
未来に夢も希望も持てなくて
何のために、自分が存在してるかさえもわからなくて
そんな私が、恋をして
好きだって想いだけで、こんなに一生懸命になれる
殻に閉じ籠って、面倒なことを避けてきた私の何処に、
こんな行動力が秘められていたんだろう
ホストをしているってだけで、
違う名前使ってるかも知れないし
何処で、どんな店で、……って、なんの情報もない
探し出すなんて、
不可能に近いんだと思う
だけど……私は
どんな小さな可能性でもしがみついてないと、
ホントにそこで終わってしまうから
けして上手いとは言えないイラストに
マサキさんの特長を書き出して、それを手に夜の街を歩いた
出来るだけ大人っぽい服装とメイクをして
調べたホストクラブを、順に覗いてみる
中に入らなくても、派手に写真を飾ってるお店もあるし
サイトを開けば、煌びやかな男の人達が並んでる
マサキさんなら、あれだけの容姿だもん
目立っちゃうと思うんだけどな
慣れない雰囲気の中
緊張しながら、いろんな人に声掛けて
書き記した店名に、×をつけてく
期待しながら、再会する"マサキさん"は、
すべて……人違いだった
「君みたいに可愛い子、
ほったらかしにする男よりさ?
俺にしなよ」
馴れ馴れしく肩を抱かれて、
慌てて逃げるのなんて、何回めだろ
「無謀…かなぁ」
探し始めて、5日め
慣れないヒールに、パンパンに浮腫んだ脚
繁華街から、少し抜けた場所の街路樹の下で屈んでみる
ため息と同時に漏れた白い息
無力な自分が虚しい
諦めたくないのに、
弱気になる自分が嫌になる
×ばかりで埋まったメモを握りしめ、
ふらふらと立ち上がった時
「あの……?」
遠慮がちな細い声が、
私を呼び止めた