第5章 emergency
爆豪サイド
"それも、てめえの個性かよ"
あのときの意味、あいつはちっともわかっちゃいなかった。
なんなんだよ、クソが
食堂で初めて飯を一緒に食った時…「ありがとう」と言われて高鳴った心臓。なんだかむず痒くて、全身が熱くなった。自分がおかしくなった気がして、これもあいつの個性かと疑った。
救助訓練に向かうバスの中では、いつもみてえに腹が立つことはなかった。ただ純粋にあいつの話を聞きてえと思った。
USJで相澤先生のところに行きたいと言った、あの瞳が…強い意志を宿した、深い碧い瞳が忘れられねえ。
なんだよ、てめえはなんでおれの側にいねえんだよ。1人で勝手にどこか行くんじゃねえよ。
むしゃくしゃした。
けれど、最後におれを心配してバンドエイドなんかよこしやがったあいつが、少しだけ可愛く見えた。
少しだけな!!!
あいつは覚えちゃいねえ。昔俺があいつに助けられたこと。川で足をすくわれて溺れた俺を、助けてくれたのは間違いなくあいつだ。
『寒くない?ぎゅうってしたら、あったかい?』
そういって力一杯…といっても子供の力だからそんなら強くはなかったけど、抱きしめてくれた。
最近妙に、あいつのことを考える時間が増えた。視界に入れる時間が増えた。…胸がざわつく瞬間が増えた。それがなんでかはわからねえ。単にほっとけねえからなのか、前に負かされたからなのか。
他の野郎といるとむしゃくしゃするが、あいつを見てると何かが俺の中を駆け巡り、満たされていくのがわかる。そんな感覚は不快感はないが、言い表せないもどかしさがある。
クソ、なんなんだよ…