第14章 新しい生活
轟「なんで……そんなこと、言うんだよ。」
焦凍くんの声には怒りが含まれていた。怒ってくれていることは嬉しい。けれど、私は焦凍くんが思ってるほどできた人間ではないんだ。
『…私、みんなが助けに来てくれた時、すっごく嬉しかったの。ただ、目の前のあの最悪な状況から抜け出せるっていう安心感…自分のことしか考えてなかったんだ。助けに来てくれたみんなは、危険を冒して、いろんなルールを無視して、犠牲にして来てくれたってこと…考えられなかった。私だって、ヒーロー志望なのに。それにね…今日相澤先生の言葉を聞いて…みんなの反応を見て、きっとみんなを止めてくれた人がたくさんいて…そのみんなの気持ちも私は踏み躙ったんだなって思ったら…私、みんなに、あやまりたくてっ……』
最後までちゃんと言えず、私の目からは涙が溢れる。泣くつもりなんてなかったのに。ちゃんと、しっかり謝って、明日からも頑張ろうって言いたかっただけなのに。
どうにか次の言葉を紡ごうと、必死に涙を抑えようとしていると、俯く私の視界に誰かの足が入ってきた。誰だろうと考える間もなく、顔を包まれ、上を向けられると、その主と目を合わせることになった。
轟「謝るな!」
『焦凍くん……?』
無理矢理視線を上げられた先にあったのは、怒りと悲しみを瞳に宿した焦凍くんの顔。なんで貴方が、そんな顔をするの…?
轟「俺は、お前にそんな顔をして欲しくてあの場所に行ったんじゃない…ただ、俺がマナを失いたくなくて、勝手に行っただけだ…そうだ、俺たちはみんなの止める声を無視した。だがそれは、お前が背負うもんじゃねえだろ…!」
『っ…でも、私は…』
切「轟の言う通りだぜ、マナ。みんなの止める声を聞かずに行ったのは俺たちだし、ただのエゴだ。ピンチのときに助かるかもしれないって思うのは、そんなに悪いことかよ。…って止めてくれた梅雨ちゃんの前で言うのもよくねえかもしんないけどよ…」
蛙「…いいえ、マナちゃん、貴方は悪くないわ。私こそ、ごめんなさい。貴方のことを傷つけてしまったわ。あの時は止めるのが正しいと思っていたし、今もそれは変わらないけれど…でもそれは、貴方の気持ちを否定するためのものじゃないのよ…無事でいてくれて、本当によかったわ」