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温もりに包まれてて 【贄姫と獣の王】

第9章 天啓 ~生贄~




首筋から鎖骨にときどき吸い付きながら
唇が滑っていく

暗闇の中
目隠しをされているかのように
回りは何も見えないけれど

王様と唇を合わせるときだけ
目の前は王様しか見えなくなっていた

大きな掌が背中に回り
パサッと足元に真っ白いドレスが
花弁の様に広がった

石が敷き詰められた床
羽織っていたローブを外し
ドレスを隠す様に敷く

暗闇の中 唯一の白が光を失い
真っ白が真っ黒に塗りつぶされていく様な錯覚さえ覚える


ガラス細工を扱うように
そっとローブの上に寝かされると
下にあるふわふわのドレスが
クッションになっているのか
黒の中に自分が沈んでいく感覚

王様の指先が
額 頬 首筋 胸
ゆっくり下がって行くほどに
熱を持っていく

地下の為か 素肌を晒し
肌寒さを感じていたので
触られた場所から
じんわりと温もりが伝わり
体の中に王様の温もりが染み込んで来た

なすがままに体を預け
息も上りはじめるが
王様の手は休むこともなく動いていく

はじめての感覚で麻痺した体が
この先どうしていいかわからず
何も見えない暗闇に手を伸ばすと
暖かい掌がギュッと掴んでくれた

『おう…さま…』

微かに出た言葉に
さらに力強く手を握られ
開いた唇は噛みつかれるように塞がれた

隙間からヌルッと入ってくる舌に
ビクッとしてしまった




ゆっくり慣らす様に
けれど何かもどかしく
進んでいく指先が触れている場所だけに神経が集中してしまう



痛みがないわけではなかった
でもそれを紛らわせてくれるように
首筋に噛みつかれるように牙が食い込み
それが甘い痺れになって快感に変わる




頭を挟んで手をつき
奥に押し付けられると
王様の手が恋しくなり
首を傾け腕にほほを刷り寄せてしまった

頬に感じる感触に
横に視線をずらすと沢山の傷が見えた

他を傷つけるなら自分を傷つける人…

人でもなく 魔属でもなく
でも 何よりも人らしい人

気が付かないうちに頬には涙がつたい
王様の腕に落ちていく

目の前にある傷がとても愛しいく見え
傷跡に触れるだけのキスをした

涙の味がしたけれど
心の中まで染みるほど暖かかったのを
感じながらアタシの意識は薄れていった。

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