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温もりに包まれてて 【贄姫と獣の王】

第7章 異な国


夜だからか何もかもが真っ暗に見える

馬車が止まり
従者の足音が遠ざかって消えてから
全く音がなくなった

ガチャ ギィー
馬車の扉が開いたのか?

?「出ろ」

暗闇から声がした

言われるまま見えない回りを手探りでゆっくり進みながら馬車を降りる

?「早く来い」

カチャカチャ
『ウッ…』

鎖を引っ張られたのだろう
首が前方に引かれて、前のめりに転びそうになり一歩足を出したが、そこに石があったのか躓いてしまった。

「ああ、見えていないのか、これだから下等種族は面倒くさい チッ」


舌打ち!
なんなのこの人 って人ではないのかな?
輪郭さえも見えないくらい真っ暗だから
わからない

?「儀式の前に怪我をされては役にたたんだろ」

そう言われ また鎖を引っ張られた
前も後ろもわからない暗闇に足を進めるのはかなりの勇気がいる

でも
逃げるもんか!
心の中でも何度も何度も繰り返しながら
足を踏み出していった

少しあるいていくと目が慣れてきたのか
うっすらと回りが見えてきた


気がついたときには天井の高い建物の廊下を歩いていた

首枷から伸びる鎖を目で追うと
前を歩く人らしからぬ者が見えた

尖った耳、滑らかな手触りであろう
短い毛並み

『キリトに似てる…』

自分の世界で飼っていた愛犬
ミニチュアピンシャーの"キリト"に後ろ頭が似てたのだ。

?「何を言っている、口を開くな」

鋭い目で振り向いてきた者は、やはり人ではなかった


ああ、やっぱり似てるなぁ

何者にも屈しない誇り高い目をし、賢い子で、とってもアタシの事が大好きな子

でも、目の前の者は違った
その眼差しに後者は微塵もなく
軽蔑、嫌悪で見下す目だった。


これ以上機嫌を悪くされるのは得策ではないと直感でわかった
黙ってまた歩き始め








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