<イケメン戦国ショートストーリー集>戦国の見える蒼穹
第247章 流れる時を愛して。 ― 義元&姫 ―
水が流れるように時は流れる。
舞が俺の隣にいるようになってどのくらいの月日が過ぎたのか。
「どうしましたか?義元さん」
針を扱う手を止めて、じっと舞を見ていた俺に気付いた舞が声を掛ける。
「いや、何とも。舞、きみは針仕事をする顔も綺麗だね」
俺が思ったとおりのことを口に出すと、途端に舞はほおを赤くする。
「もうっ、義元さん、からかわないでくださいっ」
「本当だよ。俺はこんな綺麗な子と恋仲なのかと思うと本当に嬉しいよ」
心底そう思っている。
俺がそれまでに舞につらい思いをさせた事を考えると、とても恋仲になれるとは思っておらず、むしろ俺は自分の過去のために死ぬつもりでもいたくらいだったから。
でも舞の強い気持ちが俺を揺さぶり、俺はこうして生きている。
生きていて良い、そう、思わせてくれた舞を愛している。
「舞」
俺は膝を進めて舞に近寄ると、そのまま細い肩を引き寄せた。
「どうしたんですか?」
ふふ、と笑って舞は針を針山に刺すと、縫っていた着物を置いてこちらを向く。
舞が心から愛しい、俺はそう思いながら口付ける。